今回は、仏検受験指導歴20年以上の講師が、フランス語学習者さんなら一度は聞いたことのある「仏検」について詳しく説明し、3級を受験する際に知っておきたい勉強法、おすすめの問題集や単語集を紹介します。
フランス語学習を効率的に進めるのに、今回紹介する実用フランス語能力検定(以下、仏検)は、みなさんに受けてもらいたい、DELF試験と並んで、私のおすすめするフランス語語学試験です。
仏検3級は、「基礎の総まとめ」と位置付けられ、フランス語の基本的文法全般が範囲となります。基本的な学習を一通り終了し、簡単な日常表現が使えるようになります。3級まで合格すると、ようやくフランス語のスタート地点に立ったというイメージです。
仏検とは?
仏検は、フランス語の実用能力を客観的に測る日本独自の検定試験です。
公式サイトからの引用です
- 日本の学習者を対象とした唯一のフランス語語学試験
- 40年を超える伝統と実績
- 大学などの単位取得や入学資格につながる
- キャリアアップの武器
- 国家資格「通訳案内士」外国語筆記試験の免除
など、取得するといろいろなメリットのある資格試験です。
仏検の日程
仏検を受験できる機会は、5級から2級までは、年に2回あります。春と秋に1回ずつで、一次試験は、6月と11月です。3級までは筆記試験のみで、準2級からは二次試験(面接)があり、それぞれ7月と1月に実施されます。
仏検1級と準1級については、受験できる機会は年に1回のみ。春に1級、秋に準1級が実施されます。
仏検3級 難易度
仏検3級の合格率は、およそ5-6割です(実施回によって変化する)。
2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | |
春 | 60.8% | 66.2% | 52.9% | 55.9% | 実施せず | 51.0% |
秋 | 60.3% | 63.9% | 56.1% | 63.0% | 56.1% |
標準学習時間は200時間以上とされていますので、週1回60分の学習であれば、4年間の学習に相当します。これはあくまでも目安です。実際には、1年程度でも十分目指すことのできるレベルです。
とはいえ、フランス語以外の外国語学習歴などにもよりますし、語学へのセンスなど、個人差があるのは事実ですので、参考までに。
仏検公式サイトによると、大学の第一外国語としての授業なら1年間、第二外国語として週2回の授業なら2年間の学習に相当とのことです。
ちなみに、私自身は、フランス語を学び初めて1年で4級、2年で3級のペースで仏検を取得しました。
わたしの生徒さんたちを見ていても、2年くらいのフランス語学習で無理なく仏検3級レベルに到達するペースがおおいですし、2年くらいじっくり学習できるので、こちらとしても安心して基礎固めにお付き合いできます。
ごく稀に、フランス語をゼロからはじめて半年ほどで仏検3級合格される生徒さまもおられます。でも、その方々に共通するのは、第2言語をすでに学習経験があり(たとえば英語上級レベルなど)、外国語学習の方法を自分なりに持っている方々です。でも、その方々が口を揃えて言うのは、「初歩の頃の基本の取りこぼしがある」独学には限界がある、といって、わたしのレッスンを受講しています。
仏検4級と5級は、ひとくくりの「フランス語入門」レベルですが、3級になるとようやく「フランス語初級」レベルに到達します。フランス語学習においての一番最初のちいさな山はこの3級レベルかもしれません。
一通りのフランス語文法の知識は身につけているので、3級取得以降のフランス語学習からが、本当に楽しく、長い道のりになるかと思います。
仏検3級 レベル
仏検3級は、フランス語初級レベルです。ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)のA1が、仏検3級レベルに相当します。日常的にフランス語を運用するための舞台に立てた!そんなレベルですね。
CEFR | DELF/DALF | 仏検 | |
入門 | 5級・4級 | ||
初級 | A1 | DELF A1 | 3級 |
初中級 | A2 | DELF A2 | 準2級 |
中級 | B1 | DELF B1 | 2級 |
中上級 | B2 | DELFB2 | 準1級 |
上級 | C1/C2 | DALF C1/C2 | 1級 |
仏検3級まで到達すると、表現できることや、わかることがどんどん増えてきますので、学習も楽しくなります。その一方で、3級まではとんとん拍子でレベルアップしていたのに、3級合格後は学習事項が多岐に渡るので、ちょっとした停滞期になることもあります。
3級合格までの時期とその後をどう乗り越えるかもひとつのポイントです!
仏検3級 合格点
仏検3級は100点満点で、合格基準点は60点です。
(*2022年春の基準点は55点、2023年秋は64点)
仏検3級 出題範囲と配点
試験内容は、「読む」「書く」「聞く」「文法知識」の4つからなり、「フランス語の文構成についての基本的な学習を一通り終了し、簡単な日常表現」の理解が問われます。
仏検3級 試験構成と配点
試験は100点満点で、筆記試験(70点満点)60分と聞き取り試験(30点満点)15分で構成されます。
この動画では、各問題の1問目について解説しながら、出題形式と学習のコツを解説しています。
筆記試験(70点満点)60分
大問 | 内容 | 配点 |
1 | 語彙(記述) | 8 |
2 | 動詞活用(対話文・記述) | 10 |
3 | 代名詞(穴埋め・選択) | 8 |
4 | 前置詞(穴埋め・選択) | 8 |
5 | 語順(語の並べ替えによる仏文完成) | 8 |
6 | 対話文(穴埋め・選択) | 8 |
7 | 短文(穴埋め・選択) | 6 |
8 | 説明文(内容一致・和文選択) | 6 |
9 | 会話文(穴埋め・仏文選択) | 8 |
小計70点 |
聞き取り試験(30点満点)15分
大問 | 内容 | 配点 |
1 | 会話文の書き取り(穴埋め・記述) | 10 |
2 | 短文の聞き取り(絵の選択) | 10 |
3 | 会話文の聞き取り(内容一致・和文選択) | 10 |
小計30点 |
文法知識
文法知識でいえば、基本的文法知識全般。
▶︎本当に基礎的で大切な文法事項ばかりです。
動詞
動詞については、直説法、命令法、定型的な条件法現在と接続法現在の範囲内。
▶︎4級範囲の直説法と命令法に加え、条件法現在と接続法現在までを範囲としていますが、その内容は定型的なものに限られるので、基本事項をおさえることが大切です。
単語
語彙数としては、1,670語。
語彙数は、この3級レベルでぐっと増えていますね!それだけに、表現できること、わかることが増えるわけです。
仏検公式基本語辞典3級・4級・5級
仏検3級合格を目指す方におすすめなのは、仏検公式基本語辞典3級・4級・5級です。この本を持っているのと持っていないのとでは、学習をしていく上で、安心感がちがいますね!
仏検3・4級必須単語集
実は、わたしが仏検3級を目指していた当時は、この単語集におせわになりました。このシリーズで仏検2級まで勉強した記憶があります。まとまっていて、使いやすい!すごくおすすめの単語集です。
仏検合格のための勉強として、単語集や熟語集を徹底的に活用するのは本当におすすめで、一見、検定のためかもしれませんが、この過程で得た語彙力が後々のフランス語力の礎になりますので、しっかりと学習していくことをおすすめします。
「仏検2級・3級対応」フランス語重要表現・熟語集
はじめて仏検3級を解いてみると、4級までの問題よりも、より複雑になるのが、前置詞問題です。
久松健一先生のこの「重要表現・熟語集」は、前置詞ごとに使い方と用例がしっかり載っていて、前置詞問題の救世主ともいえる大変希少な本であると思います。
仏検3級ばかりでなく2級受験の時に、3級の範囲の復習も兼ねて、何度も何度も繰り返し見ては暗記した、わたしにとっては、思い出の熟語集です。
こちらはちょっと出版年度は古いのですが、本当におすすめの1冊です!
わたしの生徒さんにもおすすめしている1冊です。
同じく、久松健一先生の最近の2冊は、Kindle版です。タブレットでもPCでも利用可能で、とても使いやすそう。しかも、準2級まで対応しています!
CD・イラストで覚えるフランス語基本500語
さらに、仏検4級、5級レベルの単語を総復習するつもりで、こちらの本もおすすめです。語彙力が弱いな、語彙力アップさせたいなと思う方は、基礎的なところから確実に確認していく作業が大切です。
この本は、仏検5級に必要な500単語が掲載されています。日常生活に必要な単語なので、仏検受験のためだけでなく、これからのフランス語学習やフランス旅行、フランス生活などに、役に立つこと間違いなし。初めてのフランス語学習必携の単語集です。
数字
仏検3級受験ともなると、数字の聞き取りには一通り慣れてきた頃かと思いますが、あらためてしっかりと準備しておくとよいでしょう!
▶︎リエゾンをすると数字単独の発音とは全く違う発音になりますので、数字と母音/hで始まる語のリエゾンの聞き取りをしっかりと練習する必要があります。
完全予想仏検3級 聞きとり問題編
仏検3級レベルくらいになると、1冊の問題集だけでは足りないかもしれません。
聞き取り問題に特化した完全予想シリーズは、いいですね。もし、いま仏検3級を自分自身が目指しているなら、必ずこの問題集を解いていると思います。
聞き取り問題は、なにしろ緊張しますから、たくさんの問題を解いておきたいところです。問題を解いて、点数が取れることも素敵なことがですが、この地道な学習こそが、やはりここでもフランス語学習の礎となると思うのです。
ひとつずつ丁寧に学習を進めるのが大事です。
仏検3級 独学におすすめの問題集
3級に限らず、仏検は独学でも、参考書や問題集を使えば、十分に合格することのできる試験です。
仏検に限らず、試験は過去問を解けば解くほど、その試験の出題傾向がわかってきますので、基礎的なフランス語を学び、いよいよ仏検受験をしようと決心したら、必ず揃えたいのは、過去問題集です。
仏検実施団体APEFが編集する公式の問題集は、解説もしっかりついているので独学にもおすすめ。さらに、参考書としても活用することができる必携本です。
仏検概要の理解と受験対策におすすめの本
仏検公式ガイドブック3級・4級・5級
最初におすすめしたいのは、仏検実施団体APEFが編集する公式問題集です。この問題集は、直近の実施問題と公式ならではの解説がついているので、仏検とはなにか?どんな出題形式か?を理解するのに最適な一冊です。
この問題集は、5級、4級、3級とひとまとめになっているので、購入するのに抵抗がある場合もあるかと思います。3級のみの過去問がみたい場合、仏検公式サイトで過去問サンプルをみることができますので、まずはそこから始めるのもいいかもしれません。
過去問に目を通してみて、試験の概要がつかめたなら、ガイドブックは買わなくてもいいかもしれません。
それでも、ガイドブックには公式ならではの解説があるので、一見の価値ありですし、4級と5級は復習として使用できるので、かなりお得な1冊であるとも言えます。
次に紹介する問題集については、特に独学で仏検に挑戦する方には、ぜひ揃えてもらいたい本です。
大問ごとの弱点補強におすすめの本
仏検公式ガイドブック セレクション3級
最初にご紹介した「公式ガイドブック」は、試験の概要や対策を練るのに役に立ちますが、合格のためにはもっと問題を解く必要があります。問題を解けば解くほど、合格が近づくからです。
この問題集「セレクション」には精選されたたくさんの練習問題が掲載されているので、おすすめです。さらに、大問ごとに解説がついているので、わからない問題があったときにすぐに解決することができるので、独学でも安心です。
この問題集をしっかり解いていけば、練習問題にたくさん触れることができるので、自信を持って試験にのぞめるはずです。
この問題集1冊で対策ができるので、わたしの生徒さんにはこちらの問題集をおすすめしています。
完全予想仏検3級 筆記問題編
仏検3級レベルでは、4級や5級とはまた違った対策が必要で、量をこなし慣れていく作業がより求められます。したがって、問題集1冊では物足りない場合は、この完全予想仏検3級 筆記問題編がおすすめです。
独学であれば、先に紹介した完全予想仏検3級 聞きとり問題編と合わせて、学習をすすめていくのがよいと思います。
ちなみに、わたしのレッスンをご受講の生徒さんは、独学ではありませんので、3級対策では、公式問題集のみをおすすめしています。
仏検3級 勉強方法
5級と4級の勉強法と同様になりますが、どんなに素敵な魔法の言葉がここに載っているかと期待していた方には、残念なことですが、語学の学習に近道はなし。毎日こつこつ継続することがなによりです。
どんなタイプの学習者さんでも、語学力を身につけるためには、継続して努力することがいちばんの学習方法だからです。
「どうしたら、毎日こつこつ継続して学習できるのか?」といった自分にあった方法を探ることが、語学を学習する上では欠かせません。
とはいえ、仏検受験に限って言えば、合格のための秘訣や対策のコツ、どのように学習をすすめるのが効果的かなどはあります。
4級までのおすすめの勉強法は、5級とほとんど同じで問題自体も、一通りの知識や理解でどうにかなる部分はありました。しかしながら、3級からは、基本事項の総まとめですので、本当にしっかりとした知識や理解が求められます。
その上で、おすすめの勉強法としては、検定試験全般にいえることですが、まず合格のためにいちばんにやらなくてはならないのは、過去問に目を通すことです。敵をしらないと勝てないです。
過去問題に触れるだけではなくて、実際に多くの練習問題を解いていく必要があり、
その上で、自分に足りないものは何か?なにがわからなくて、なにができるのか?探っていきます。
その際に、知らなかった文法事項を理解する作業、知らない単語や熟語、前置詞の使われ方、動詞の活用や時制などを暗記していく作業など、ちょっと高度な学習になりますが、ひとつずつ丁寧に解決していく必要があります。
文法
文法については、代名詞、前置詞、形容詞と副詞の位置や時制、代名動詞の複合過去(否定)、目的語人称代名詞の語順、そのほか、関係代名詞、間接話法、比較級・最上級、強調構文、非人称構文、ジェロンディフなどの基本事項もよく出題されています。
仏検3級では、初級フランス文法のすべてが範囲となっていますので、徹底的に基礎を定着させることが大切です。そこでおすすめなのは、シンプルな練習問題を解くこと。問題集を選んだら、それを1冊何度も何度も解いて、わからないことをゼロにするつもりで、徹底的に、丁寧に学習をすすめることが大切です。
フランス文法はじめての練習帳
フランス語初級文法をおさらいするのにおすすめの文法の問題集は「フランス文法はじめての練習帳」です。【仏検3、4、5級】に対応しているので、おすすめです。
この問題集は、各文法項目の説明が簡単にまとまっていて、そのあとに問題という構成になっています。解答付きで、答えだけでなく解説もついているので、さらに独学にも安心です。
単語
単語については、4級までは別途オリジナルの単語帳などを作っていくことをおすすめしていましたが、3級では、先に紹介した仏検3級に特化した単語集を活用することをおすすめします。
既にまとめられた単語集は、語彙がどんどん増えていく3級レベル以降、必携です。上級レベルになると、もう一度オリジナルの単語帳を登場させるのがいいかと思いますが、それまではレベル別に必要な語彙を自分のものにしていく作業が有効です。
動詞
動詞については、直説法(現在・複合過去・単純未来・半過去・大過去)に加え、基礎的な条件法現在や接続法現在、命令法やジェロンディフが出題されることもあります。
活用を覚えるだけでなく、正しく綴ることができ、適切な時制を使う力が求められます。動詞の活用はとにかく、コツコツ覚えることです。効率よく覚え、そのあとは反復練習、アウトプット練習をしていくことをおすすめします。
各問題の詳しい解説については、「仏検3級問題くわしい解説」の記事で、説明しています。
仏検公式問題集・単語集 おすすめの理由
今回、仏検3級合格のための問題集や単語集を紹介しましたが、どの問題集も仏検を実施しているAPEF編集の本ですので、解説も詳しく、仏検がどんな試験なのかよくわかるのでおすすめです。
仏検5級対策同様、仏検4級対策本も、いろいろな出版がありますが、公式問題集をおすすめしているのは、仏検5級、4級、3級あたりまでは、どの問題集もどれもあまり変わり無いと思うからです。
どの問題集も似たり寄ったりなので、練習問題の数もこなせる、公式問題集がやはり安心感があると思うからです。まずは、仏検を知るのに公式問題集(ガイドブック・セレクション)は最適です。
実際、わたしのレッスンをご受講の生徒さまたちには、仏検4級、5級までは、問題集や単語集は特に購入する必要はありません、と言っています。
なぜなら、いつものレッスンで学習している内容をしっかり学べば、悠々と到達できるからです!
しかしながら、仏検3級受験となると、普段のレッスンで扱いきれない事項や、何度解いてもわかりにくい文法事項をしっかり理解するために、いろいろな方向からのアプローチ(=たくさん問題を解いてほしい)があったほうがよいので、公式問題集セレクションをおすすめしています。
フランス語の辞書についても、仏検4級、5級に相当するフランス語の入門レベルでは、(辞書はあったほうがいいに決まっていますが)買っても買わなくてもどちらでもよい、と言っていますが、いよいよ3級受験ともなると、フランス語学習が軌道に乗っている頃ですので、辞書がまだの方には、そろそろ辞書購入検討をお伝えします。
その理由と詳しい辞書選びの方法については、この記事で説明しています。
仏検3級受験をしようという段階は、これからのフランス語学習の基礎の基礎の総まとめの時期ですので、本当に楽しんで学習をしてもらいたいです!
今回、仏検3級について詳しく説明しましたが、3級の過去問題(予想問題)は別の記事で詳しく解説しています。