フランス語の数字は、1から100までを一通り覚えると、そのあとは比較的スムーズに理解できるようになります。20までをまず覚え、そのあと69まで覚えたら、70からは少し変わった数え方をするので、その仕組みを理解し、覚えていきます。
今回は、そのフランス語の数字 70、80、90は、なぜ変わった形をしているのかについて説明します。その仕組みは、20進法という中世の頃の数の数え方に由来しますので、わかりやすく説明します。
フランス語の数字「なぜ?」|数字の数え方の謎
フランス語の数字は、100までしっかり覚えれば、あとはどんなに大きな数字でも、100までの数字の応用で言えるようになります。だから、100までしっかり覚えることが本当に大切です。
レッスンでは、まずは、10までしっかり、そのあと20まで、30から69まで、そして、70から100まで、と段階的に学習をしていきます。
69まで学び、70からのフランス語の数字を知ると、学習者さんたち口をそろえて「フランス語の数字ややこしい!?」と思ってしまう…、フランス語の数字の数え方。覚えるのが難しく感じてしまいますね。
さらに、仏検やDELFのリスニング問題には、必ずと言っていいほど、この70、80、90の数字が出題される(傾向にある)のも事実です。わかりにくく、むずかしいからこそ、しっかりと習得したいものです。
それでは、この複雑な仕組みをわかりやすく説明します。
フランス語1〜69 :10進法とは?
まず、わたしたちが日本語で、普段の生活で使っている「数の数え方」は、「10進法」という数え方です。「いーち、にーい、さん(1、2、3)・・・」と数えていき、「10」で二桁になります。10になったら次の位にいくのが10進法です。
フランス語では、69までは「10進法」の数え方です。
10 dix (ディス)
20 vingt (ヴァン)
30 trente (トラントゥ)
40 quarante (キャラントゥ)
50 cinquante (サンカントゥ)
60 soixante (ソワサントゥ)
10の数字ごとに、ひとつの単語というイメージでわかりやすいですね!
70〜 :20進法とは?
ところが、10進法の数え方が念頭にあると、フランス語の70からの数え方に戸惑ってしまいます。
70 soixante-dix (60+10) (ソワサントゥ ディス)
80 quatre-vingts (4×20) (キャトル ヴァン)
90 quatre-vingts (4×20+10) (キャトル ヴァン ディス)
70からのフランス語の数え方は、「20進法」の数え方になっています。
70については、10進法でも、20進法でもない、ぴったり60進法というわけでもない。中途半端な数え方になっています。
80については、「20が4つで80」という表し方は、そのままズバリ「20進法」ですね。90は、80の数え方に10を足しているだけなので、これも「20進法」です。
◎まとめ
現代のフランス語の数字の数え方は、10進法と20進法のふたつが混在していると言えます。それでは、いつから?どうして?どのように?このような数え方になったのか?みていきましょう。
フランス語の数字 起源と歴史
そもそも、人類は数をいろいろな方法で数えてきたという歴史があります。例えば、両手を使えば10進法の数え方、さらに両足も使えば20進法の数え方というふうに、数の数え方は、人類の進化とともに、いろいろ存在しています。
私たちが普段慣れているのは、10進法の数え方ですが、世界ではさまざまな数字のシステムが採用されているようですが、圧倒的に多いのは「5進法」「10進法」「20進法」とのことです。
ちなみに、私たちの生活で欠かせない「時計」の数え方ですが、これは、60進法ですね。
時代や地域が変われば、数字のシステムもさまざまです。
現代フランスのフランス語では、10進法と20進法のふたつが混在しているわけですが、時代をさかのぼれば、今とは異なる数字の規則があったようです。その移り変わりと仕組みについて簡単にまとめました!
70, 80, 90 のなぜ?
フランス人の祖先であるガリア人(ケルト人の一派)たちの文化では、20進法がつかわれていたため、現代のフランス語の数字70, 80, 90にもその名残があるようです。
実際、20進法がつかわれていた中世の時代には、30を「20+10」(vingt et dix)40を「2×20」(deux vingts)、60を「3×20」(trois vingts)、80を「4×20」(quatre vingts)、120を「6×20」(six vingts)と言っていたようです。
また、中世の時代、1260年にパリに創設された病院 « Les Quinze-Vingts » は、15×20で、300名受け入れ可能な病院であることから、名付けられたそうです。
また、フランス語で書かれた最古の書物からの歴史を辿ってみると・・・
- 842年『ストラスブールの誓約書』から数世紀の間は、20進法が使われていた
- 中世のあいだは、ラテン語に由来する10進法とガリア語に由来する20進法の「併用」がされていた
- 17世紀になるとようやく現代フランス語の数字のシステムに落ち着いた
フランス語の数字も歴史を振り返ってみると、なぜ現代のフランス語が複雑なのかがよくわかり、とても興味深いです!
スイスやベルギーの数字の数え方
フランス本土以外のフランス語圏の国である、ベルギーやスイスのフランス語などでは、
70=septante(セプタント)
80=octante(オクタント)
90=nonante(ノナント)
septante、octante、nonanteなどのように、10進法の言い方が定着しているそうです。こちらの数え方の方が、なんとなく馴染みがあり、覚えやすそうですね。
30年以上フランス語関わりのある私としては、現代フランス語の数字の方が馴染みがあり、定着しているので、この数え方のほうが慣れないですが・・・。
フランス語の数字の歴史 まとめ
- フランス語の数字70、80、90の仕組みとその歴史について見てきましたが、まず言えることは、フランス語の歴史の流れのなかで、このような数字のシステムができあがった、ということ。
- 10進法を使っていた「ラテン語」や20進法を使っていた「ガリア語」の影響をうけて、現代フランス語の数字では、2つの数字のシステムが混在するようになったということ。
言語は生き続けるものである限り、この「現代フランス語」と呼ばれる言語も、将来はまたちがう形になっているかもしれません!
最初は、慣れないフランス語の数字の仕組みですが、慣れてしまえば、なんてことはない!数字については、反復練習が特にものを言う。どんどん練習をして、慣れていきましょう。
以下の記事では、「フランス語の数字100まで」をしっかり解説しています!