ディコ、ロワイヤル、小学館ロベール、Petit Robert…。30年以上フランス語を学び、教えてきた私が、レベル別におすすめの辞書をご紹介します。
フランス語学習者の方からよくいただく質問のひとつが、「おすすめの辞書はありますか?」というものです。しかし実は、この質問に対する答えはひとつではありません。なぜなら、フランス語の辞書は学習段階によって選ぶべきものが変わるからです。
入門者に向いている辞書もあれば、中級以上になってから力を発揮する辞書もあります。また、留学や読書、翻訳など、用途によっても選び方は変わります。
この記事では、フランス語学習歴30年以上、フランス語講師歴20年以上の私が、
初心者におすすめの辞書
中級以上で買い替えたい辞書
上級者向けの辞書
電子辞書やアプリとの付き合い方
について、自身の学習経験も交えながらご紹介します。
実際に私が使ってきた辞書の遍歴もあわせてお話ししますので、これから辞書を購入しようと考えている方の参考になれば幸いです。
はじめに
実は、このテーマの記事はずっと書きたいと思っていました。なぜなら、私は辞書が大好きだからです。記事を書きながら本棚を眺めていると、これまで使ってきた辞書が次々と思い出されます。
初めて買った小さな仏和辞典。
留学に持っていった辞書。
大学院時代に憧れていた大辞典。
振り返ってみると、フランス語力の成長に合わせて、辞書も少しずつ変わっていきました。
辞書は洋服によく似ています。
大きければよいというものではありません。
初心者が専門家向けの大辞典を買っても使いこなせませんし、逆に上級者が初級者向け辞書だけで学習を続けるのも限界があります。
大切なのは、その時の自分に合った辞書を選ぶこと。
そこで今回は、
- 入門〜初級
- 中級〜上級
- 上級・専門レベル
の3段階に分けて、おすすめの辞書をご紹介していきます。
入門〜初級:まずは「辞書を買わない」という選択肢もある
フランス語を始めたばかりの方から、「最初に買うべき辞書は何ですか?」と聞かれることがあります。
私の答えは意外かもしれません。
「今すぐ買わなくても大丈夫」です。
入門テキストには巻末単語集が付いていることが多く、学習初期の語彙はそれほど多くありません。
まずはテキストを使いながら、
- フランス語を続けられそうか
- もっと調べたいと思うようになったか
を確認してからでも遅くありません。
辞書を購入するベストなタイミングは、「もっと知りたい!」と思い始めた時です。
初心者におすすめ:ディコ仏和辞典/プチ・ロワイヤル仏和辞典
ディコ仏和辞典(白水社)
いちばんにおすすめしたいのは、白水社の『ディコ仏和辞典』です。
これは、私が初めて購入したフランス語の辞書でもあり、今でも強い思い入れのある1冊です。
学生時代、登下校のときも、晴れの日も雨の日も風の日も、本当に毎日のように持ち歩いていました。単語を調べるたびに蛍光ペンで線を引き、よく開くページは自然としわくちゃになっていきました。
当時の私は、それが「使い込んだ辞書」の証のようで、少し誇らしかったのだと思います。自分だけの、ふわふわに育った辞書でした。
もちろん、思い出だけでおすすめしているわけではありません。
『ディコ仏和辞典』は、とにかく使いやすい辞書でした。初めてフランス語を学ぶ人にとって、必要な情報にたどり着きやすく、説明もわかりやすい。辞書を引くことが負担になりにくい1冊だったと思います。
その後、私のフランス語レベルが中級に進むころ、より本格的な辞書へ買い替えることになり、ディコは本棚でおやすみすることになりました。
今はもう手元にはありませんが、私のフランス語学習の出発点には、間違いなくこの辞書がありました。
プチ・ロワイヤル仏和辞典
もうひとつ、初級者の方におすすめしたいのが、旺文社の『プチ・ロワイヤル仏和辞典』です。
私自身は、学習者時代にこの辞書を使っていたわけではありません。けれども、現在の学習者にすすめる辞書としては、とても有力な選択肢だと思います。
理由は、初級者にも使いやすく、語法やコロケーション、類語の説明など、学習に役立つ情報が充実しているからです。また、オンライン辞典が利用できる点も、今の学習スタイルに合っています。
『プチ・ロワイヤル仏和辞典』は初級者から上級者まで、フランス語を学ぶすべての方に向けた学習仏和辞典。
◆第5版では新語・新語義を追加し、約45,000語を収録。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/075311
◆フランス語学習に役立つ囲み記事が、ますます充実しています。
・見出し語とよく結びつく語を集めた「コロケーション」欄を新設
・「語法」欄では、簡潔にわかりやすく語法を解説
・語の違い、使い分けが一目でわかる「類語」欄
◆成句を全面的に見直し、より今日のフランス語を反映させています。
・コミュニケーションに役立つ定型表現「会話文成句」「会話をつなぐ」もさらに充実
・言葉の持つ言外の意味やその表現の使われる場面などを、「!」で示したコミュニケーション注記を新設
◆フランス語の新綴りにマークを付けて併記した初めての仏和辞典。
◆購入者特典として、PCやスマホで使えるオンライン辞典付き。変化形・活用形からの検索や動詞活用表が閲覧できて便利です。また、フランス語の発音、基本フレーズの音声とそのスクリプトをダウンロードすることができます。
ディコが「私のフランス語学習の原点」だとすれば、プチ・ロワイヤルは「今から始める人にすすめやすい現代的な辞書」。
この2冊は、どちらか一方が正解というより、好みや使い方で選んでよいと思います。
私の場合は、ワインレッドのシックな装丁の「白水社のディコ」が本当に好きでした。私のフランス語学習は、まさにこの辞書とともに始まったと言ってもよいと思います。
とはいえ、辞書選びに唯一の正解があるわけではありません。毎日手に取りたくなるかどうかも、大切な基準です。
だからこそ、それぞれが「これなら続けられそう」と思える1冊を選んでほしいと思っています。
中級〜上級:本格的に続けるならロワイヤル仏和中辞典
ロワイヤル仏和中辞典
辞書も洋服と同じで、成長とともに買い替えが必要になります。
初級用の辞書は非常に使いやすいのですが、学習が進むにつれて、「載っていない単語が増えてきた」「もう少し詳しい説明がほしい」と感じるようになります。
そんなときにおすすめなのが、『ロワイヤル仏和中辞典』です。
私自身、この辞書に移行したのは、仏検2級を目指して勉強していた頃でした。当時はまだ準2級という級はありませんでしたので、現在の基準でいえば、準2級から2級あたりのレベルに達した頃だったと思います。
初めて手にしたときは、「いよいよ本格的な辞書を使うようになった」という気持ちになりました。少し大人びた装丁も気に入っていて、レベルアップの証のように感じていたことを覚えています。
そして何より、この辞書は長く使えます。
実際、私はその後の留学にも持参しました。当時はスマートフォンもなく、電子辞書もまだ一般的ではありませんでしたから、わからない単語があれば、この辞書を引くしかありませんでした。
それでも困ることはほとんどありませんでした。
大学の授業、新聞記事、文学作品、留学生活。
フランス語を本格的に学ぶ人にとって、非常に頼もしい1冊だと思います。

2022年6月現在の情報。残念ながら、ロワイヤル仏和中辞典は、絶版とのことです。新品を買うならお早めに!あるいは中古で買えるかもしれません。
上級・専門レベル:小学館ロベール仏和大辞典
ロベール仏和大辞典
さらに上のレベルを目指す方にとって、ひとつの到達点ともいえる辞書があります。
それが『ロベール仏和大辞典』です。
通称「小学館ロベール」。
私にとっては、学生時代からの憧れの辞書でした。
大学院でフランス語学を学んでいた頃、この辞書はまさに特別な存在でした。当時の価格は3万円ほど。学生にとっては簡単に手が出せる金額ではありません。
ところがある日、大学近くの古書店で、新品同様のものを1万円で見つけたのです。
もちろん、その場で購入しました。
今でもよく覚えています。
この辞書の魅力は、圧倒的な情報量です。
一般的な仏和辞典では見つからない語義や専門用語、歴史的な用法、新聞や学術文献に出てくる表現まで調べることができます。
もっとも、正直なことを言えば、すべての学習者に必要な辞書ではありません。
日常会話や仏検対策であれば、ロワイヤル仏和中辞典で十分です。
ロベールが本当に力を発揮するのは、
- フランス語学や文学を専門的に学ぶ人
- 翻訳に取り組む人
- 研究者や大学院生
- 原書や専門文献を読む人
といった段階でしょう。
私にとってロベールは、「便利な辞書」というだけではありませんでした。
本来なら大学図書館で引くような辞書を、自分の本棚に置いている。
そんな満足感も含めて、特別な存在だったのです。
●他に類を見ない、最多12万語を収録。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09515201
一般語6万、専門語4万と、新語、略語、固有名詞、俗語、隠語など、総12万語を収録。語彙の選択はmあくまでも「現時点における用法」を重視し、今日使われない語は排除しました。フランス語の「いま」が把握できる最新の本格的辞典です。
●新聞・雑誌などによる新しい用例25万。
フランスの代表的な新聞「ル・モンド」や雑誌などに掲載された新鮮な時事的話題から、適切な用例を文脈の長短にかかわらず多彩に採用。大辞典ならではの成果です。
●求める語義がすぐ探し出せる。的確な訳語と解説。
現代フランス語の適訳が、実際の使用頻度に即して見つけられます。歴史主義を改め、現用の立場から大胆な記述の再構成を試みました。
●全分野専門語を徹底的に採録。新語や新略語もギリギリの時点まで追求。
専門語は、文学、語学はもとより政治、服飾など広範にわたり収録しました。人名、事件、団体名などの固有名詞から、新聞や雑誌に頻出する新語、略語も解説つきで採録。
のちほど詳しく書きますが、その後、私にとって大事件ともいえる出来事が起こります。
なんと、カシオの電子辞書に「小学館ロベール仏和大辞典」が搭載されるようになったのです。
少し大袈裟かもしれませんが、当時の私には、人類が宇宙旅行を実現したかのような衝撃でした。
それまで「ロベール仏和大辞典」といえば、価格も高く、大きくて重い辞書でした。学生時代には憧れの存在であり、私自身も大学院時代に思い切って購入した特別な1冊です。
それが、手のひらサイズの電子辞書に収まっている。
しかも、ロベールだけではありません。仏和辞典や和仏辞典、英和辞典など、さまざまな辞書が一緒に入っていて、持ち運びも簡単です。
当時の学習者にとっては、本当に夢のような時代になったと感じました。
私ももちろん、ロベール搭載モデルのカシオ電子辞書を購入しました。
それ以来、大学院後半から教員、そしてフランス語講師として活動するようになってからは、辞書といえばほぼ電子辞書を使うようになりました。
とはいえ、大学院時代に購入した紙の『ロベール仏和大辞典』も、今なお本棚にあります。
大きく、重厚で、圧倒的な存在感を放つその姿を見るたびに、「ここまでフランス語を続けてきたんだな」と少し誇らしい気持ちになります。
辞書は単なる道具ですが、ときには学習の歴史そのものを記憶している存在でもあるのです。
そして現在です。
いまの私は、『小学館ロベール仏和大辞典』のアプリ版をスマートフォンに入れています。
正直なところ、現在いちばん重宝しているのは、このアプリ版です。外出先でもすぐに調べられますし、重い辞書を持ち歩く必要もありません。
ただし、初学者や学習途中の方には、私は今でも紙の辞書をおすすめしています。
紙の辞書には、検索した単語だけでなく、その周辺の語や関連表現が自然と目に入るという良さがあります。ページをめくる時間も含めて、語彙が少しずつ身体に残っていく感覚があります。
一方で、アプリは持ち運びや検索の速さに優れています。
つまり、
学習を育てるなら紙の辞書。
日常的に素早く調べるならアプリ。
という使い分けがよいと思います。
なお、アプリでは仏和辞典だけでなく、仏仏辞書も使っています。これについては、後ほど詳しく紹介します。
こどもフランス語・小中学生向け:やさしい仏仏辞書
私のレッスンを受講しているのは、大人の方だけではありません。最近は、小学生・中学生の生徒さんも増えています。
そこで紹介したいのが、フランスのネイティブの子ども向けに作られた仏仏辞書です。
子ども向け辞書は、母語話者の子どもはもちろん、外国語としてフランス語を学ぶお子さんにもおすすめです。
さらに、定義がやさしいフランス語で書かれているため、大人の学習者にとっても、とてもよい教材になります。、平易な定義が簡単なフランス語で書かれていますので、おとなの学習者さんにもおすすめです!
フランス語辞書のロベールが小中学生向けの辞書を出しています。
Le Robert Benjamin: First French Dictionary
6〜8歳向けの仏仏辞書です。
フランスの学年でいうと、CP・CE1・CE2、日本の学年でいうと小学校1〜3年生くらいに対応します。
はじめて仏仏辞書に触れるお子さんや、簡単なフランス語で意味を理解する練習をしたい方に向いています。
Le Robert Junior
7〜11歳向けの仏仏辞書です。
フランスの学年でいうと、CE・CM・6e、日本の学年でいうと小学校2〜6年生から中学1年生くらいまでに対応します。
Benjaminよりも語彙数が多く、説明も少し詳しくなります。
フランス語に慣れてきたお子さんや、仏仏辞書を少し本格的に使ってみたい学習者におすすめです。
仏仏辞書・オンライン辞書・ラルース/ロベール
仏仏辞書のデビューは、1回目の留学の時でした。下の写真の左から2番目の辞書「プチ・ロベール」がわたしが初めて購入した仏仏辞書です。「見た目がかっこいい!」持っているだけで「なんだか、フランス語ができるようになった気分!」と思ったものですが、実際、こういった仏仏辞書が留学中には必要になったのも事実です。
さてここで、フランス語の辞書といえば、「ロベール」か「ラルース」が代表的ですが、これら2種類にも特徴があります。「青い」ロベールと「赤い」ラルース、こんなふうに色でも二項対立しているのが興味深いですね!
わたしはロベール派
わたしはと言うと、前々から気がついていましたし、こうしてこの記事を書くために本棚からすべての辞書を取り出してみてもよくわかるのが、根っからの「ロベール派」であること。
ロベールは正統派のフランス語の辞書。ちょっと堅苦しい印象がありますが、そのシャープな見た目通り、中身も語彙とその意味や用法、詳しく真面目な感じで掲載されていて、わたし好みです。

Le Robert dico en ligne
こちらは、オンライン版の「ロベール・ディコ」です。PC作業中には、便利です。
https://dictionnaire.lerobert.com/
小学館ロベール
いちばん左の「小学館ロベール」については、和仏辞書で前述にこの辞書への情熱を書いた通りです。
Le Petit Robert
私が初めて購入した本格的な仏仏辞書が、『Le Petit Robert』でした。
表紙は年代によって少しずつ違いますが、やはり自分が使ってきた版には特別な愛着があります。
仏仏辞書を使うようになると、フランス語を日本語に置き換えるだけではなく、フランス語の中で意味を理解する感覚が少しずつ育っていきます。
Le Robert junior
左から3番目が、「こども向けのロベール」。
私がこの辞書を購入したのは、2回目のフランス留学中でした。当時、私はフランス語を教え始めており、さらにフランスの大学院でフランス語教育を専門に学んでいました。
フランス語話者向けの「国語」として、どのようにフランス語を教えるのか。その講義の中でこの辞書が紹介され、実際に購入しました。
使ってみて感じたのは、簡単なフランス語で意味を確認できることの大切さです。
フランス語学習者が最初に手に取る仏仏辞書として、とてもおすすめです。
ロベール・クレ仏和辞典
こちらは、初級向けの仏和辞典です。
比較的新しい辞書で、私が大学院時代にお世話になった先生方が編纂に関わっていました。そのうちのお一人の先生からプレゼントしていただいた、私にとって思い出深い辞書です。
当時、この辞書を作る際にどのような思いが込められていたのか、装丁にどんな工夫をしたのか、といったお話を聞かせていただきました。
そうした背景も含めて、私のお気に入りの辞書のひとつです。
わたしの夫はラスース派
わたしのフランス語人生の中で、仏仏辞書にラルースの選択肢はこれまでなかったことが、実に面白いのですが、それでも我が家には、ラルースが存在しています。それはなぜかというと・・・
同じくフランス留学を経験しているわたしの夫は、根っからの「ラルース派」でした!彼曰く、小難しくなくて、使いやすい、わかりやすいのだそうです。
確かに、ラルースはコミュニケーションを重視して編纂している傾向があります。使いやすさとっかかりやすさ、わかりやすさに定評ありなのが、伺えますね!でもわたしは、やっぱり「ロベール派」」。こんなふうに、自然と手に取るものが学習者によっても違うのが、面白いなぁと、結婚して本棚(辞書コーナー)を眺めてつくづく感じました!

Larousse en ligne
こちらは、ラルースのオンライン版です。
https://www.larousse.fr/dictionnaires/francais
Larousse Dictionnaire Français
ラルースはあまりなじみがないので、コメントのしようもないのですが、実は大学院にいたとき、ラスース系の仏和辞書(白水社ラルース仏和辞典)をわたしの恩師たち数名が編纂しています。そのときの様子をよく知っているので、コミュニケーションを重視した形で、できあがっているのだということが、このラルースの使いやすい点でもあるかと思います。
Larousse Dictionnaire de poche français-anglais
わたしの夫は英語も堪能なので、こういった英仏の辞書もラルースで持っているようです。ポケット版なので、「意味というよりは、訳」、「フランス語単語の英単語はコレ!」といった具合に、シンプルにわかりやすいそうです。夫曰く、このわかりやすさは、ラルース全般に言えることだそうです。たしかにそうかもしれません。
和仏辞書は必要か?
さて、ここまで、仏和辞書と仏仏辞書を中心にご紹介してきましたが、「和仏辞書って必要なんでしょうか?」という疑問にお答えしたいと思います。
その前に、わたしは和仏辞書を1冊のみ持っています。これは、1990年代後半、はじめて渡仏するとき、「お守りがわりに持っておこう!」と思って購入したものです。
初めての渡仏は、10代のころ。幼かったわたしが当時考えたのは、フランスに滞在中「これってフランス語でなんていうんだろう?」となったとき、「和仏辞書があればなんとかなるのではないか?」ということでした。当時は、いまのように、オンライン辞書、翻訳ツール、Googleやアプリなどで手軽に調べられませんから、こういった紙の辞書が重宝したものです。
前述した、1回目の留学中も、この和仏辞書は持っていき、たびたび使っていたので、とても役に立った記憶がありますが、初代、二代目の仏和辞書がボロボロになったのに対して、この和仏辞書は一代限り、そしていまも保存状態はとてもよいことからもわかる通り、日本でのフランス語学習には、それほど必要としなかったという事実があります。
日本でフランス語を学ぶ場合、最初に多く出会うのは「フランス語を読んで、日本語で理解する」場面です。ですから、まず必要になるのは仏和辞書です。
一方、「日本語からフランス語を探す」場面は、会話や作文、留学生活では役に立つものの、学習全体の中心にはなりにくいと感じています。
さらに今は、オンライン辞書、翻訳ツール、AIがあります。ちょっとした表現なら、スマートフォンで簡単に調べることができます。
というわけでは、「和仏辞書って必要なんでしょうか?」という疑問にお答えは、いまの時代なら必要ないのではないでしょうか。
それでも和仏辞書を持つなら『現代和仏小辞典』
とはいえ、
「やっぱり紙の和仏辞書を1冊持っておきたい」
という方もいると思います。
その場合におすすめしたいのが、白水社の『現代和仏小辞典』です。
私が長く持ち続けている和仏辞書も、この1冊です。
この辞書の魅力は、とてもシンプルなところです。
小さい。
軽い。
持ち運びやすい。
旅行や短期留学に持っていくには、とても便利な辞書でした。
今ならスマートフォンで代用できる場面も多いと思います。それでも、紙の和仏辞書を選ぶなら、私はこの辞書をおすすめします。
そして気づけば、これも白水社。
振り返ってみると、私のフランス語学習は、かなり白水社の辞書とともに歩んできたのだなと思います。
紙の辞書を選ぶときの注意点
ここまで、辞書についてのいろいろな角度からの説明にお付き合いいただき、ありがとうございます。紙の辞書を中心にご紹介してきましたが、注意点もあります!
まずは、「言葉は生きている」ものですので、出版年度が新しくない「紙の辞書」には、それなりに不都合もあるということです。できれば、最新版を購入することをおすすめします。
それでも、古くならない情報(語の意味など)や、初級向けの辞書には、ゆるぎないそれぞれの辞書の特徴の掲載された学習コラム的なものや、簡単な文法説明などが掲載されているため、年式にかかわらず、辞書と仲良くなるにこしたことはありません!
紙の辞書が最近はあまり流行らないかもしれませんが、じっくり学習に向き合うにはメリットもあります。使い勝手は、たしかにアプリや電子辞書でささっと調べられるので、それなりに紙の辞書は劣るかもしれませんが、その代わり紙の辞書には「あじわい」があります。
一言でいうなら、ページをめくって、調べる喜びですね!本が好きな方なら、同感してくれるかもしれませんね。
わたしの生徒さんには、不便でも初めは紙の辞書を持って、単語を調べるというひとつの作業を大切に、それぞれのフランス語学習ストーリーを作って欲しいなと思っています。
電子辞書・アプリ、そしてAIへ
ここまで、紙の辞書についてかなり熱く語ってきました。
その後、私自身の辞書環境も大きく変わりました。
紙の辞書から電子辞書へ。
電子辞書からアプリへ。
カシオの電子辞書に『小学館ロベール仏和大辞典』が入ったときは、本当に画期的でした。その後、スマートフォンやタブレットで辞書アプリを使えるようになり、持ち運びの便利さはさらに増しました。
けれども、2020年代半ばの今は、さらにその先に来ているように感じます。
正直に言えば、最近はアプリの辞書すら開く機会が少なくなってきました。
ちょっとした表現やニュアンスの確認なら、AIに聞いた方が早いこともあります。例文を作ってもらったり、似た表現の違いを比べたり、会話の場面に合わせて自然な言い方を確認したりすることもできます。
つまり、辞書は「単語を調べる道具」から、「言葉を確認するための選択肢のひとつ」になってきたのだと思います。
それでも、辞書が不要になったとは思いません。
AIは便利ですが、辞書のように体系的に語義や用法を確認することには、また別の価値があります。特に学習の初期には、言葉をひとつずつ調べる経験そのものが、フランス語の土台を作ってくれます。
だからこそ、今の私の考えはこうです。
学習段階に応じて、使う辞書、調べ方を変えていく。
時代によって道具は変わります。
言葉とじっくり向き合う時間は、どの時代にも必要なのだと思います。
わたしの好きな仏仏・英仏辞典:シンボル辞典と百科事典
最後に、少しお楽しみの辞典をご紹介します。
ここからは、実用というより、私の趣味に近いものです。
ただ、こうした辞典を眺めていると、フランス語は単語の意味だけで成り立っているわけではないのだと感じます。言葉の奥にある文化や象徴、ものの見方に触れることができるからです。

Petit Larousse des symboles
私にとって、これは数少ないラルースの辞典のひとつです。
その名の通り、シンボル辞典です。
たとえば絵画を見ていて、
「ここに蛇が描かれているけれど、フランス語圏、あるいはヨーロッパ文化の中で、蛇は何を象徴しているのだろう?」
と思ったとき、この辞典を開くと、その象徴的な意味を調べることができます。
「へえ、このモチーフにはこんな意味があったのか」
と、ページをめくるたびに小さな発見があります。
絵画や文学、フランス文化に興味のある方には、とても楽しい辞典だと思います。
フランス語を学ぶ醍醐味は、語そのものの意味を知ることだけではありません。その奥にある文化的な意味や、歴史的に積み重なってきたイメージに触れることにもあります。
私にとっては、そうした表面的ではない、少し奥行きのあるフランス語教育こそが、わくわくするところです。
Le mini Visuel français-anglais

もうひとつは、『Le mini Visuel français-anglais』です。
これは、言語教育というより、ほとんど道楽の分野かもしれません。
ありとあらゆるものの名称が、イラスト付きでフランス語と英語で紹介されているビジュアル百科事典です。
眺めていると、
「こんな細かい部分にも名前があるの?」
と驚くことがあります。
しかも、フランス語と英語では載っているのに、日本語では自分でも何と言うのかわからないものもあります。
単語を覚えるためというより、世界を細かく名づけていく楽しさを味わうための辞典です。
私は持っていませんが、日本語版も販売されているようです。
こうした辞典は、試験対策や日常会話に直接必要なものではありません。
でも、言葉の世界を楽しむには、とても魅力的な1冊です。
まとめ:わたしのフランス語辞書歴
ここまで長い文章をお読みいただき、ありがとうございます。
最後に、私のフランス語辞書歴をまとめておきます。
初めての辞書
仏和:『ディコ仏和辞典』(白水社)
和仏:『現代和仏小辞典』(白水社)
仏仏:『Le Petit Robert』
中級の頃の辞書
仏和:『ロワイヤル仏和中辞典』
上級・専門レベルの辞書
仏和:『ロベール仏和大辞典』(小学館ロベール)
これが、私のフランス語の学び始めから上級レベルにいたるまで、お世話になってきた辞書のラインナップです。
こうして振り返ってみると、本当に感慨深いものがあります。辞書のひとつひとつに、その時々の学習の記憶が残っているように感じます。
今回の記事で紹介した辞書は、どれもおすすめできるものです。
ただし、辞書選びに唯一の正解があるわけではありません。私の辞書歴は、あくまでもひとつの参考として受け取っていただければと思います。
ぜひ実際に手に取って、「これなら使ってみたい」と思える1冊を選んでみてください。
そして、ご自身だけのフランス語辞書ストーリーを作っていっていただけたらうれしいです。
この記事が、フランス語学習のための辞書選びのお役に立てましたら幸いです。














