今回は、仏検受験指導歴20年以上の講師が、フランス語学習者さんなら一度は聞いたことのある「仏検」について詳しく説明し、5級を受験する際に、おすすめの問題集や単語集を紹介します。
フランス語学習を効率的に進めるのに、今回紹介する実用フランス語能力検定(以下、仏検)は、みなさんに受けてもらいたい、DELF試験と並んで、私のおすすめするフランス語語学試験です。
仏検5級は、「フランス語への入り口」と位置付けられているいちばん最初の級になります。とはいえ、基本事項にこそ、日常よく使う、大切なことがたくさん詰まっていますので、初めて受験される方は、5級から受けてみることをおすすめします!
仏検とは?
仏検は、フランス語の実用能力を客観的に測る日本独自の検定試験です。
公式サイトからの引用です
- 日本の学習者を対象とした唯一のフランス語語学試験
- 40年を超える伝統と実績
- 大学などの単位取得や入学資格につながる
- キャリアアップの武器
- 国家資格「通訳案内士」外国語筆記試験の免除
など、取得するといろいろなメリットのある資格試験です。
仏検の日程
仏検を受験できる機会は、5級から2級までは、年に2回あります。春と秋に1回ずつで、一次試験は、6月と11月です。3級までは筆記試験のみで、準2級からは二次試験(面接)があり、それぞれ7月と1月に実施されます。
仏検1級と準1級については、受験できる機会は年に1回のみ。春に1級、秋に準1級が実施されます。
仏検5級 難易度
仏検5級の合格率は、およそ8-9割です(実施回によって変化する)。
2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | |
春 | 90.2% | 86.2% | 80.6% | 88.9% | 実施せず | 83.7% |
秋 | 76.9% | 89.9% | 85.6% | 85.4% | 88.7% |
標準学習時間は50時間とされていますので、週1回60分の学習であれば、1年間の学習に相当します。これはあくまでも目安です。
実際、中学・高校でフランス語を教えていたときには、週1回50分の授業で1年間学習を終えた、2年目の春に5級を受験させていました。5級は受験した生徒全員が合格していました。
また、わたしの生徒さんのなかには、週1回のプライベートレッスン3ヶ月ほどで、5級を取得している方もいましたし、フランス語を初めて3ヶ月ほどで、5級と4級を取得された方が数名いました。
しっかりと基礎を身につけていれば、仏検5級はさほどむずかしくはないです。5級は飛ばして4級から受験しようかな?と思われる方もいるかもしれませんが、仏検5級で問われる内容には基礎がたくさんつまっていますので、フランス語を学び始めたら、5級から受験するのがおすすめです。
仏検5級 レベル
仏検5級は、フランス語入門レベルです。ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)のA1が、仏検3級レベルですので、5級はまだヨーロッパ言語共通参照枠のレベル分けに該当しない位置付けです。
CEFR | DELF/DALF | 仏検 | |
入門 | 5級・4級 | ||
初級 | A1 | DELF A1 | 3級 |
初中級 | A2 | DELF A2 | 準2級 |
中級 | B1 | DELF B1 | 2級 |
中上級 | B2 | DELFB2 | 準1級 |
上級 | C1/C2 | DALF C1/C2 | 1級 |
語学学校などでは、A1以前のレベルとして、A0(ゼロ) を設けているところもあるように、仏検5級は、学習始めたてのゼロ地点レベルとなります。仏検4級も同様です。
仏検5級 合格点
仏検5級は100点満点で、合格基準点は60点です。
仏検5級 出題範囲と配点
試験内容は、「読む」「聞く」「文法知識」の3つからなり、「初歩的な日常的フランス語」の理解が問われます。
仏検5級 試験構成と配点
試験は100点満点で、筆記試験(60点満点)60分と聞き取り試験(40点満点)15分で構成されます。
この動画では、各問題の1問目について解説しながら、出題形式と学習のコツを解説しています。
筆記試験(60点満点)30分
大問 | 内容 | 配点 |
1 | 名詞の前につく品詞(穴埋め・選択) | 10 |
2 | 動詞活用(穴埋め・選択) | 10 |
3 | 語順(語の並べ替えによる仏文完成) | 8 |
4 | 応答(選択) | 8 |
5 | 語彙(選択) | 8 |
6 | 短文の読み取り(絵の選択) | 8 |
7 | 会話文(穴埋め・選択) | 8 |
小計60点 |
聞き取り試験(40点満点)15分
大問 | 内容 | 配点 |
1 | 応答(選択) | 10 |
2 | 数字の聞き取り(数字をマーク) | 10 |
3 | 短文の聞き取り(絵の選択) | 10 |
4 | 短文の聞き取り(絵の選択) | 10 |
小計40点 |
文法知識
文法知識でいえば、初歩的な日常表現の単文を構成するのに必要な文法的知識。
▶︎初歩的で本当に大切な文法事項ばかりです。
動詞
動詞としては、直説法現在、近接未来、近接過去、命令法の範囲内。
▶︎第1群規則動詞(er動詞)、第2群規則動詞(ir動詞)、基本的な不規則動詞の現在形をしっかりと覚えておきたいところです。
▶︎近接未来と近接過去は、aller や venir を使いますので、不規則動詞のなかでも、être と avoir に並んで、特にしっかりと活用をおさえたい動詞です。
単語
語彙数としては、550語。
こつこつフランス語を学んでいれば、単語もしっかりと身につけることができると思いますが、仏検対策を意識して、単語集をひとつ携えておくといいですね!もし単語集をお探しなら、こちらがおすすめです。
CD・イラストで覚えるフランス語基本500語
この本は、仏検5級に必要な500単語が掲載されています。日常生活に必要な単語なので、仏検受験のためだけでなく、これからのフランス語学習やフランス旅行、フランス生活などに、役に立つこと間違いなし。初めてのフランス語学習必携の単語集です。
仏検公式基本語辞典3級・4級・5級
さらに、仏検3級まで合格を目指したい方へは、仏検公式基本語辞典3級・4級・5級がおすすめです。この本を持っているのと持っていないのとでは、学習をしていく上で、安心感がちがいますね!
数字
聞き取り問題で、数字が出題される範囲としては、20まで。
▶︎出題は20までかもしれませんが、時間と日付が出題されることがよくありますので、わたしの初級フランス語レッスンでは、この段階で31までしっかり学習してもらいます。
▶︎リエゾンをすると数字単独の発音とは全く違う発音になりますので、数字と母音/hで始まる語のリエゾンの聞き取りをしっかりと練習する必要があります。
仏検5級 独学におすすめの問題集
5級に限らず、仏検は独学でも、参考書や問題集を使えば、十分に合格することのできる試験です。
仏検に限らず、試験は過去問を解けば解くほど、その試験の出題傾向がわかってきますので、基礎的なフランス語を学び、仏検受験をしようと決心したら、必ず揃えたいのは、過去問題集です。
仏検実施団体APEFが編集する公式の問題集は、解説もしっかりついているので独学にもおすすめ。さらに、参考書としても活用することができる必携本です。
仏検概要の理解と受験対策におすすめの本
仏検公式ガイドブック3級・4級・5級
最初におすすめしたいのは、仏検実施団体APEFが編集する公式問題集です。この問題集は、直近の実施問題と公式ならではの解説がついているので、仏検とはなにか?どんな出題形式か?を理解するのに最適な一冊です。
この問題集は、5級、4級、3級とひとまとめになっているので、購入するのに抵抗がある場合もあるかと思います。5級のみの過去問がみたい場合、仏検公式サイトで過去問サンプルをみることができますので、まずはそこから始めるのもいいかもしれません。
過去問に目を通してみて、試験の概要がつかめたなら、ガイドブックは買わなくてもいいかもしれませんね。
それでも、ガイドブックには公式ならではの解説があるので、一見の価値ありですし、長い目で見れば、4級、3級のときにも使えるので、かなりお得な1冊であるとも言えます。
次に紹介する問題集については、特に独学で仏検に挑戦する方には、ぜひ揃えてもらいたい本です。
大問ごとの弱点補強におすすめの本
仏検公式ガイドブック セレクション4級・5級
最初にご紹介した「公式ガイドブック」は、試験の概要や対策を練るのに役に立ちますが、合格のためには、もっとたくさん問題を解く必要があります。問題を解けば解くほど、合格が近づくからです。
この問題集「セレクション」には精選されたたくさんの練習問題が掲載されているので、おすすめです。さらに、大問ごとに解説がついているので、わからない問題があったときにすぐに解決することができるので、独学でも安心です。
この問題集をしっかり解いていけば、練習問題にたくさん触れることができるので、自信を持って試験にのぞめるはずです。
仏検5級 勉強方法
どんなに素敵な魔法の言葉がここに載っているかと期待していた方には、残念なことですが、語学の学習に近道はなし。毎日こつこつ継続することがなによりです。
どんなタイプの学習者さんでも、語学力を身につけるためには、継続して努力することがいちばんの学習方法だからです。
「どうしたら、毎日こつこつ継続して学習できるのか?」といった自分にあった方法を探ることが、語学を学習する上では欠かせません。
とはいえ、仏検受験に限って言えば、合格のための秘訣や対策のコツ、どのように学習をすすめるのが効果的かなどはあります。
検定試験全般にいえることですが、まず合格のためにいちばんにやらなくてはならないのは、過去問に目を通すことです。敵をしらないと勝てないです。
その上で、自分に足りないものは何か?なにがわからなくて、なにができるのか?探っていきます。
仏検5級受験では、特にフランス語を学びはじめたての頃は、いかにたくさんインプットするか?が決めてになります。問題集などでたくさんの練習問題に触れ、いろいろなフランス語単語や表現をインプットすることが大切です。
あとは、問題集などでたくさんの練習問題に触れることです。
その際に、出てきた単語で知らない単語は、別途オリジナルの単語帳などを作っていくとよいです。
それらと並行して、動詞と数字については、しっかりと学習する必要があります。
文法事項については、初歩的な基本事項が出題されます。入門レベルの段階から、ひとつずつ丁寧に理解していくことが大切です。
勉強方法 – 動詞
動詞については、【直説法現在、近接未来、近接過去、命令法】が出題されています。
フランス語の動詞の活用は、フランス語学習をするうえで「最重要」とも「第1難関」ともいえるべき学習項目です。
動詞の学習を効率よく進めるためには、あきらめずに、ひとつずつ覚えていくことが大切です。
たとえば、規則動詞には規則があるけれど、不規則動詞には全く規則がないのか?といえば、そうではありません。不規則動詞にも規則はあります。
活用の規則を学び、効率よく学ぶのがおすすめです。
動詞の学習は、本当に大切な学習項目ですので、YouTubeでは、活用の動画を投稿しています!
ブログでは、動詞の全体像、活用の覚え方などをとても詳細に書いていますので、あわせてご覧ください。
勉強方法 – 数字
もうひとつ、入門レベルの段階でとても大切なのは、数字をマスターすることです。特にマスターしたいのは、数字のあとに、母音/hではじまる単語が続く場合の【音がつながるルール】です。
【音がつながるルール】の例としては、
・値段をいう【数字+euro(s)】
・年齢をいう【数字+an(s)】
・時間をいう【数字+heure(s)】
などがよく出題されます。数字を発音できるようにするだけでなく、【数字+リエゾン】に慣れておくことが大切です。
勉強方法 – 文法
文法の学習については、シンプルな練習問題を解くこと。
問題集を選んだら、それを1冊何度も何度も解いて、わからないことをゼロにするつもりで、入門の段階から、徹底的に、丁寧に学習をすすめることが大切です。
フランス文法はじめての練習帳
この問題集は、各文法項目の説明が簡単にまとまっていて、そのあとに問題という構成になっています。基本事項をしっかりと定着させるのにおすすめの問題集です。
詳しい解説については、「仏検5級問題くわしい解説」の記事で、説明しています。
仏検公式問題集・単語集 おすすめの理由
この記事を読んでいる方は、フランス語の学習を始めたて、あるいはけっこう長く学習しているけれど今回はじめて仏検を受けようかな?と思った方たちでしょうか。
今回、仏検5級合格のための問題集や単語集を紹介しましたが、どの問題集も仏検を実施しているAPEF編集の本ですので、はじめての仏検にはぴったり。解説も詳しく、仏検がどんな試験なのかよくわかると思います。
仏検5級対策本は、いろいろな出版がありますが、公式問題集をおすすめしているのは、仏検5級、4級、3級あたりまでは、どの問題集もどれもあまり変わり無いと思うからです。
どの問題集も似たり寄ったりなのであれば、練習問題の数もこなせる、公式問題集がやはり安心感があると思うからです。まずは、仏検を知るのに公式問題集(ガイドブック・セレクション)は最適です。
実際、わたしのレッスンをご受講の生徒さまたちには、仏検4級、5級までは、問題集や単語集は特に購入する必要はありません、と言っています。
なぜなら、いつものレッスンで学習している内容をしっかり学べば、悠々と到達できるからです!
フランス語の辞書についても、仏検4級、5級に相当するフランス語の入門レベルでは、買っても買わなくてもどちらでもよい、と言っています。その理由は、こちらの記事で詳しく解説しています。
仏検5級受験をしようという段階は、フランス語学習の第1歩を歩み出したばかりですので、フランス語学習の楽しみを見つけることができ、もっともっとできるようになりたい!という気持ちが芽生えている頃かもしれません。
まずは5級に合格して、次のステップに進めるようがんばりましょう!
今回、仏検5級について詳しく説明しましたが、5級の過去問題は別の記事で詳しく解説しています。