今回は、わたしのフランス語学習経験を交えて、不朽の名作「星の王子さま」のフランス語テキストを使って、フランス語学習をするメリットとその方法、おすすめの教材をご紹介いたします。
さらに、なぜ中級レベルなりたての学習者におすすめなのか、その理由を説明します。
はじめに
わたしがはじめてこの作品に出会ったのは、フランス語を学びはじめて3年目のことです。必修科目の講読の授業で扱われたので、自分から積極的に選び、読んだというわけではありませんでした。
さらに言えば、日本語でも読んだことのない作品でした。授業で1年間かけて、作品を精読したわけですが、その間、一度も日本語翻訳版は読まずに、さいごまでフランス語原文で読み切ったのです。当時のフランス語の先生に感謝ですね!先生の手作りプリントで、学習したのです。
大変でありながらも楽しかったという記憶がありますが、いまこうして思い返すと、本当にいい経験をしたなぁと思っています。
補足ですが、この作品がすごく好きというわけではなかったのに、いつも身近にあり、すごく縁のある作品です。フランス語講師として文学作品を読む授業を担当した際、自分で選んでいないのに、やはりこの「星の王子さま」を読むという講読の授業でした。
そうしているうちに、いつしかとても好きな文学作品になっていました!
いつから読める?フランス語のレベルは?
フランス語を教えるようになって、よくわかるのは、仏検3級までの学習事項をしっかり学び切っているのであれば、なんとか独学でも「星の王子さま」をフランス語原文で読めるということです。
私自身、ちょうど仏検3級に合格した頃に、この作品をはじめてフランス語で読みました。授業で読んだので、先生の解説があったから読み切れたというのもありますが、最近は独学に適したよい教材もありますので、ひとつの目安として、仏検3級取得したころが、おすすめのタイミングかと思います!
さらにいうと、ちょうどこの頃から、楽しいばかりだったフランス語学習がすこし苦しくなってくる段階でもあります。長い道のりの中級レベルに突入です!
この中級レベルの期間をいかに楽しく学習を継続していくかがポイントです。そこで、この記事のメインテーマでのひとつでもある「星の王子さま」で学習するメリットについて、説明します。
「星の王子さま」で学習するメリットとは?
では、どうして仏検3級取得した頃なのか?について。
仏検3級というのは、ひととおりフランス語の初級レベルのフランス語を修了している段階になります。このレベルになると、中級までのあいだ、少しずつ複雑なフランス語を学習していく必要があります。
正直なところ、仏検3級取得レベルでは、フランス語原文で「星の王子さま」を読むには、まだちょっと背伸びをしている段階でもあります。でも、だからこそ、おすすめしたい!
メリット1:楽しく学習できる
仏検準2級、DELF B1準備レベルの段階は、中級の入り口です。語学習得において、この中級レベルは本当に長い道のりです。なので、最初のメリットは、楽しく!学習できる点です。
読書経験や好みによって、楽しいかどうかは人それぞれですが。それでも、読書を通してフランス語を学ぶ喜びは、学習を続けていくモチベーションになります。
小さい頃、日本語で書かれたお話を楽しく読んで、日本語を自然に身につけたように!
✅フランス語を楽しく自然に身につけることができます。
メリット2:実践を通して、初級フランス語の総復習ができる
フランス語原文で読むということは、読解の実践になります。文学作品は、学習用に作られたフランス語ではありません。これまで習ってきた知識を総動員させて、読み進めていく楽しさ!読めた、理解できたときの喜び!これもまた、学習継続のモチベーションにつながります。
私自身、「星の王子さま」という作品を通して覚えた、たくさんの単語・表現・文法事項は、宝物でもあります!その単語・表現・文法をみると、作品のシーンを思い出してしまうくらいです。
以来、いろいろな作品をフランス語で読みましたが、作品を読むたびに、新しく覚えた単語や表現、文法事項は、その作品とともに刻まれています。
言語学習において、ひとつの文学作品を読んでみる価値はおおいにあると言えます。
メリット3:音読を通して、フランス語らしいリズムを身につけることができる
名作といわれる作品は、音読をしてもすごく心地よいです!わたしは、YouTubeで「星の王子さま」の音読を投稿していますが、これはいわば、わたしの「趣味」です。
フランス語を音読するのが単純に楽しいのです!
でも、言語学習における音読の重要性、あらゆる科学がそれを検証していて、「音読はだめだ!」という研究は一つも見つかりません。むしろ、音読の有効性を主張するものばかりです。
フランス語レベルアップに音読は欠かせません。これは、経験からも、科学的にもいえることです。音読は無料!やって得することがあっても、損することはないはず。
中級レベルという長い道のりに、楽しく学習を続けるコツのひとつとして、音読を取り入れることをおすすめします。
追記:大切なことを書くのを忘れていました!(メリット4と5)
メリット4:教養を身につけることができる
外国語、特にフランス語はレベルが上がるに従って、語学力そのもの+αの教養(特にその文化圏の文化・教養)が本当に大切になってきます。話せる(発話できる)だけではなく、内容のあることを話せるようになっていく必要があります。
DELF 試験の内容を見てみてもわかる通り、B1はまだ日常的な内容をサバイバルにやり遂げる力が求められますが、B2あたりからは、論理力、分析力、批判的なものの見方などあらゆる見識が求められます。母語で培ってきた教養だけでは太刀打ちできません。
フランス語で考える必要性、フランス語が話されている世界の文化と教養が必要です!
そこで、ひとつの方法として、フランス文学作品を読むことをおすすめします。「星の王子さま」に限らずです!よく、フランス人たちは、文学作品の引用をして話を進めることがあります。そんなとき、いろいろな知識があれば、言おうとしていることを深く理解することができます。
メリット5:たくさんの日本語翻訳が出版されている
これは大切なことというよりは、そういえば日本語翻訳版がたくさんあるので、学びやすいのでは?という理由です。学習していればきっと、「自分で訳してみたい」はず。でも、独学だと、ちょっとしたところで、どんな意味かわからなくなる。
そんなときに、日本語翻訳版を読んでみれば、読み比べてみれば、スッキリするかもしれません。もしかすると、もっといい訳ができるかもしれません!
私自身、日本語翻訳版を手に取ったのは、初めて講読の授業を担当した時でした。そのときは、何冊か目を通して、ひとつお気に入りが見つかりました。私にとって翻訳をすることに、それほどパッションはないので、自分で訳してみたい!などと思ったことはないのですが。
星の王子さまの日本語翻訳8種類を比較してみました。翻訳のおもしろさがよくわかりますので、こちらの記事もぜひ目を通してみてください!
おすすめする教材 厳選3冊+α
自分で訳す星の王子さま
いちばんのおすすめは、こちら!「自分で訳す星の王子さま」です。この本は、単語の意味がひとつずつ載っているだけでなく、少し難しい文法についての解説が詳しいです。
知らない単語については、本当は辞書を使ってひとつずつ調べることがおすすめですが。
文法については、自分一人ではわからいこともあるので、特にこの本は独学で「星の王子さま」を読み進めたい場合におすすめです。
「星の王子さま」の物語をちょっと深く味わいたいばあいにも、この本にはそういった解説も載っているので、読んでいて楽しくなります。
対訳フランス語で読もう星の王子さま
この本は、見開きでフランス語原文と日本語翻訳になっていて、先の本と同様に単語の意味や文法解説も載っています。わかりやすいと言う点で、こちらもおすすめです!
「星の王子さま」で学ぶフランス語文法
この本は、どちらかと言うと、「星の王子さま」をフランス語で一人で読み進めたい場合というよりは、星の王子さまに出てくる文法項目を使って、フランス語の初級文法をおさらいしたいときにおすすめです!
初級フランス語レッスンや文法レッスン、星の王子さまを読むレッスンを開講しているため、とりあえず、この本を本棚に置いています。実際には使っていませんが、こういったアプローチで学習するのも楽しいかもしれません。
いつか私自身が、こういった本を作りたいな!という意味で、お気に入りにいれておきます。
深く星の王子さまをわかるための3冊
朗読CD フランス語で聴こう 星の王子さま
このCDブックは、先に紹介した「対訳 フランス語で読もう 星の王子さま」とセットで持つのがよいかもしれません。こちらの音源は、名俳優 ベルナール・ジロドーによる朗読です。
わたしがはじめて「星の王子さま」をフランス語で読んだとき、授業では、先生が朗読CDを聴かせてくれ、そのあとに、精読していくという流れでした。その時の朗読は、名俳優 ジェラール・フィリップによるものでした!
私自身が講読の授業を担当したとき、生徒たちに聴かせた朗読もこのジェラール・フィリップによるものでしたが、「ベルナール・ジロドーかジェラール・フィリップかどちらの朗読が好きですか?」と聴かれても、答えられないです。どちらも、よさがあります。
わたしは、どちらのCDも持っているので、ぜひ両方の朗読を聞き比べてみることをおすすめいたします。
100分で名著 星の王子さま
こちらの本は、NHK Eテレの人気教養番組(この番組がだいすき!)の、2012年12月のテキストです。こちらの番組は、専門家が解説してくれるので、本当にわかりやすい!番組の録画もしています。
今でも(たぶん)購入可能なこのテキストで、星の王子さまの世界をあじわうのは、とてもおすすめです!私自身、講読の授業で内容理解について生徒たちにわかりやすく説明するのに、おおいに役立ちました。
「星の王子さま」をフランス語で読む
この本はタイトルずばりの内容で、星の王子さまをフランス語で読むときに、ちょっとむずかしく感じる箇所を著者の観点でピックアップして解説している形です。
わたしは、大学院生の時に読書してみようと言う感覚で、こちらの本を読んでみました。なかなか興味深く、読み返してみても、学びがあります。
おすすめの 星の王子さまの本 3冊
さいごに、おすすめの3つを紹介しておわります。
やさしいフランス語で読む星の王子さま
こちらは、フランス語原文で書かれた作品のリライト版になります。難しい表現や単語を極力使わず、作品にしています。個人的に作品はオリジナル版で味わうのがいいと思うので、これは、お気に入りではありませんが、まずは、やさしいフランス語でやっぱり読んでみたい!場合におすすめです。
星の王子さま 禅を語る
この本は、つい最近見つけた本です。「星の王子さま」のなかで語られるストーリー、あるいは「哲学のようなものを禅の思想で言い換えるならば、こういったことである」といったことを禅僧である著者が書いた本です。
わたしは、禅の本をいろいろ読んでいたので、星の王子さまといっしょになって、それが語られるとどんなことになっているのだろう?という興味本位で読んでみましたが、実に面白かったです。
ひとつのバリエーションとして、星の王子さまを理解するのに役立つかもしれません!
28言語で読む「星の王子さま」 世界の言語を学ぶための言語学入門
最後に、わたしがいま気になっている星の王子さまの本を紹介します。わたしの専門は、言語学(フランス語学)とフランス語教育です。
星の王子さまを通して「言語学」を学ぶというアプローチ、さらに28言語で星の王子さまをよむことができるというこの画期的な本を見つけ、欲しくなりました。買う予定です。読み終えたら、ここにまた感想を書きたいと思っています。
星の王子さまで英語を学ぶ
星の王子さまの言語はフランス語ですが、英語に翻訳された星の王子さまで英語を学ぶ本はこちらです。
対訳 英語で読もう「星の王子さま」
わたしは、フランス語版と合わせて、この「対訳 英語で読もう星の王子さま」を持っています。星の王子さまをフランス語、あるいは日本語で読む音読レッスンなどのとき、英語が堪能な学習者さまとのレッスンでは、こちらの本を活用しています。
「星の王子さま」を英語で読もう
こちらは、予備校講師の解説付きで、英語で読める「星の王子さま」です。
星の王子さまを絵本でよむ
フランス語の原文をそのまま忠実に日本語に翻訳されているわけでなくても、まずは気軽にストーリーを素敵な挿絵とともに楽しみたいときに、絵本で読むのはおすすめです。
絵本 星の王子さま
絵本で出会う 星の王子さま
星の王子さま ポップアップ絵本 完全翻訳版
星の王子さまのかわいい挿絵のポップアップ絵本を2つ紹介します。飛び出す絵本は、ページをめくるたびにわくわくしますね!
特に一つ目に紹介する「完全翻訳版」こちらはおすすめです。池澤夏樹氏の翻訳がついていて本文にも安心感がありますし、なによりかわいい挿絵が飛び出すのがいいですね!
星の王子さま ポップアップ絵本 コンパクト版
少しお値段がしてしまいますが、こちらも池澤夏樹氏翻訳で、「星の王子さま ポップアップ絵本・完全翻訳版」の「コンパクト版」です。
星の王子さまの洋書
星の王子さまをフランス語で読みたい場合は、日本から出版されている学習用の本を購入することもできますが、フランスで出版されているいわゆる「フランス語原文」の小説を手に入れることがおすすめです!
フランス語 Le Petit Prince – folio
フランスで読まれている星の王子さまのポケット版(folio)はこちらです。フランス語原文とイラストが載っていて、もっともスタンダードなフランス語原書です。
英語 The Little Prince
アマゾンのベストセラーに選ばれている「星の王子さま」の英語版です。
フランス語と英語
フランス語と英語版の星の王子さまです。フランス語と英語で読めるだけでなく、CD付きなので、さらに勉強になります。
フランス語 ポップアップ絵本
フランス語のポップアップ絵本です。
日仏バイリンガル|読み聞かせ「星の王子さま」
YouTubeで、フランス語と日本語で、星の王子さまの音読をしています。2020年5月から2023年8月まで、ゆっくりペースでしたが、(日本語とフランス語で)全編の音読をしました。
音読をしていると、作品、作品のなかの登場人物、作者へのいろいろな考えがでてきましたので、章ごとにわたしの感じたことなどをまとめていく予定です。
おわりに
今回紹介した本は、すべておすすめですが、独学で学習したい!読み進めたい!場合は、一つ目に紹介した「自分で訳す星の王子さま」がおすすめです。
「星の王子さま」は、わたしにとって、縁の深い、ずっとそばにある作品です。
そんな縁もあって、「星の王子さま」関連の学習教材となりうる本をたくさん持っています。いろいろなフランス語との関わり(学ぶとき、教えるとき)のなかで、どれも役に立ちました!
実は、「星の王子さま」関連の学習教材となりうる本以外にも、「星の王子さま」関連の本はまだ持っています。いつか近い将来に、その特集も書きたいです。
最後になりましたが、「星の王子さま」の日本語版(翻訳版)はたくさん出版されていますので、次回は、「星の王子さまの日本語版の翻訳を比べる」をテーマに記事を書く予定です。