「オペラ座の怪人」は、フランスの作家ガストン・ルルーによって1909年に発表された小説(Le Fantôme de l’Opéra)です。英語で歌われるミュージカルでお馴染みの “The Phantom of the Opera”ですが、フランス文学なのです。
そこで今回は、一生に一度は必ず観たい、読んでおきたい、知っておきたい「オペラ座の怪人」の歌、小説、映画、ミュージカルなどの作品を紹介していきたいと思います。
やさしいフランス語で読める小説「オペラ座の怪人」は、フランス語初級(A2〜)レベルで読むことができるので、おすすめです。まずは、歌を聞いてみたり、映画やミュージカルでその世界観を体験し、あらすじなどを頭に入れておくといいでしょう。
この作品を鑑賞した後は、パリの『オペラ座』を実際に訪れたら感動すること間違いなし!わかりやすくしっかりと解説しますので、いっしょに味わいましょう!
小説|オペラ座の怪人 – ガストン・ルルー
まずは、フランス文学である原作の紹介から。「オペラ座の怪人」は、1909年にフランスの作家ガストン・ルルー(Gaston Leroux)によって書かれた小説です。19世紀のパリ国立オペラ(Opéra national de Paris)で起こった史実をもとに書かれたと言われています。
オペラ座の怪人 – ガストン・ルルー
Le Fantôme de l’Opéra – Gaston Leroux
フランス語のタイトルでは、Le Fantôme de l’Opéra(ル ファントム ドゥ ロペラ)です。
あらすじ|オペラ座の怪人
この物語をひとことでまとめるなら「サスペンスとミステリーに満ちた愛の物語」あるいは「美しくて哀しい愛の物語」です。オペラ座の怪人という人物に焦点をあてると、少し切ないですが、物語全体として鑑賞するなら、いろいろな場面があるので、楽しめる作品です。
19世紀末、夜ごと流麗な舞台が繰り広げられるパリの花、オペラ座――。その地下深くには奇怪な事件を巻き起こす怪人が棲み着いていると噂されていた。
“音楽の天使”を名乗って夜ごと彼女に歌を教えていたのは、愛するクリスティーヌをプリマドンナに仕立て上げ、自分の音楽を歌わせたいと願う”オペラ座の怪人”だった。
クリスティーヌに想いを寄せる幼なじみのラウル子爵に嫉妬し、”オペラ座の怪人”は、オペラ座の地下に広がる神秘的な湖を進み、クリスティーヌを彼の隠れ家へと連れ去ったのだった・・・。
登場人物|オペラ座の怪人
愛するクリスティーヌをプリマドンナに仕立て上げた”オペラ座の怪人”と”音楽の天使”を信じていたクリスティーヌ、そして怪奇な事件から愛するクリスティーヌを守ろうとするラウル子爵の3名が主要な登場人物です。
オペラ座の怪人(Le Fantôme de l’Opéra, Érik)
醜い容姿のため誰からも愛されず、仮面をつけてオペラ座の地下深くに身を潜めている謎の男
クリスティーヌ・ダーエ(Christine Daaé)
オペラ座の若きコーラスガール。歌のレッスンをしてくれる怪人を、”音楽の天使”だと信じるようになる。ラウル子爵とは幼なじみの間柄
ラウル・シャニュイ子爵(Raoul Vicomte de Chagny)
クリスティーヌの幼なじみである若き貴族(子爵)。怪人と対決し、クリスティーヌを守り抜くことを決意する。
日本語版|オペラ座の怪人
まずは日本語で、ささっと小説に目を通しておくのもいいかもしれません。角川文庫、新潮文庫、光文社古典新訳文庫あたりから出ているどれか、を1つ選ぶのがいいかなと思います。翻訳者が違うので、読み比べも楽しそう!
フランス語版|Le Fantôme de l’Opéra
せっかくフランス語を学習しているのなら、フランス語で作品を読んでみることもまた楽しみのひとつです。原文で読む、やさしいフランス語で読む、どちらもおすすめです!
原文で読む「オペラ座の怪人」
やさしいフランス語で読む「オペラ座の怪人」(A2レベル)
フランス語初級の学習者さんにおすすめしたいのは、やさしいフランス語で読む「オペラ座の怪人」(A2レベル)です。Hachette社から出版されていて、フランス語学習者向けにリライトされている「やさしいフランス語で読むリーダーシリーズ」です。
原文のフランス語ではないにしても、学んだフランス語で読めるということと、音声ダウンロードもできるので、おすすめです。
A2レベルは、仏検準2級相当ではありますが、仏検3級取得後くらいからでも、読み進めることはできるはずです。
フランス語で読むオペラ座の怪人(初級〜中級レベル)
日本の出版社から出版されているこちらは、フランス語初級〜中級レベルの学習者さん対象です。日本語訳がしっかり付いているので、初学者にとっては安心ですね!なお、対訳の訳文は、「語学的な理解」を目的にしたものではなく、「文脈的な理解」を目的としているそうです。
原文の真意をつかむための「文脈的な理解」が求められるため、単なるに語と語を訳して、わけのわからない文章になることが避けられる点で、初級から少し先に進みたい学習者さんにおすすめです!
小説の舞台|オペラ・ガルニエ(オペラ座)
パリ国立オペラ(Opéra national de Paris)は、いわゆる「オペラ座」あるいは「パリ・オペラ座」のことで、ガルニエ宮とオペラ・バスティーユの2つの劇場がありますが、この小説の舞台となっているのは、ガルニエ宮です。
実際、私は高校3年生で、はじめてパリを訪れた際に、このガルニエ宮を訪れました。やはり実際にこの目で見たあの空間の感動は、その数年後の「オペラ座の怪人」鑑賞の際に、思い出されました。こういった経験ができて幸せだなぁと思ったものです。
『オペラ座の怪人』の舞台でもある、オペラ・ガルニエ(オペラ座)の完成は、ベル・エポック期である1875年です。ベル・エポック(Belle Époque)は、フランス語で「美しい時代・よき時代」という意味です。
ベル・エポックとは?
19世紀末から第一次世界大戦が勃発するまでの間、フランスでは産業革命が進み、ボンマルシェ百貨店に代表される都市の消費文化が栄えるようになった。この華やかな時代や文化のことを表す。
1900年:パリ五輪、パリ万国博覧会の開催
・会場として、グラン・パレとプティ・パレが建設された
・セーヌ河にはアレクサンドル3世橋が架けられた
・装飾美術「アール・ヌーヴォー」が世界を席巻
オペラ・ガルニエ(オペラ座)の完成当時、パリにはメトロ(地下鉄)も開通し、いわゆる「花の都パリ」が誕生したころです。シャルル・ガルニエによる設計のオペラ・ガルニエ(オペラ座)は、オペラ座横にある、老舗カフェ『カフェ・ド・ラペ』の設計もしているそうです。
劇団四季|3分でわかるミュージカル『オペラ座の怪人』
大学院生のとき、初めて劇団四季のミュージカル『オペラ座の怪人』を観ました。観劇をするという体験自体が、当時の私にとってあまりない機会でしたので、本当に感激したことを今でも鮮明に覚えています。
次の動画は、劇団四季の「3分でわかるミュージカル『オペラ座の怪人』」です。わかりやすくまとまっているので、ぱぱっと、あらすじを知るのにも最適です。
日本語で歌われるので、ちょっと違和感があるような気もしますが、鑑賞していると心が高鳴って、曲や劇の流れの中に吸い込まれるようにどんどん日本語の歌詞が気にならなくなりました。
大学院生のとき、初めて観たこのミュージカル「オペラ座の怪人」が忘れられなくて、後に紹介する「オペラ座の怪人 25周年記念 in ロンドン」のDVDを購入して、何度も見ました。中学・高等学校で英語を教えていたときには、英語の科目の中で、生徒たちに全編を鑑賞させたほどです。
最近は、DVDだけではなくBlu-rayなどは、とてもお安く購入できますね。
映画|オペラ座の怪人
2004年製作/141分/G/アメリカ
原題または英題:The Phantom of the Opera
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年6月14日
その他の公開日:2005年1月29日(日本初公開)
映画版は、それほどいい評判を聞いたことがないのですが、豪華な演出なのは確かです。ミュージカル版と比べてしまうのは酷ですが、やはりミュージカル鑑賞のあとの映画鑑賞には物足りなさを感じたのもまた事実・・・。ですが、気軽に映画を見てみるのもおすすめです!
「キャッツ」「エビータ」などの大ヒットミュージカルを世に送り出した天才作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが、自身の最高傑作と認めるミュージカル「オペラ座の怪人」。ガストン・ルルーの原作をもとに、美しい旋律で綴った究極のラブストーリーは、ミュージカル史上に燦然と輝く不朽の名作となり、ロイド=ウェバー自身のプロデュースによって、ここに完璧な形で映画化された。(オペラ座の怪人4Kデジタルリマスター公式サイト)
ミュージカル|オペラ座の怪人 25周年記念 in ロンドン
私は特に、観劇のワクワク感とアーティストたちの魂が伝わってくるそんな作品が大好きです。
この「オペラ座の怪人 25周年記念 in ロンドン」は完璧でした!何度も鑑賞するほど気に入っています。そしていつか、ロンドンで「オペラ座の怪人」を観劇することが私の夢でもあります。
予告編|オペラ座の怪人 25周年記念 in ロンドン
この動画は、オペラ座の怪人 25周年記念 in ロンドン」の動画版(DVD / Blu-ray)として販売するための予告編動画です。わくわくする感じが伝わってくるでしょうか?わたしは、こちらが販売された当時、すぐに購入しました!当時は、Blu-rayがなかったのか(?)知らなかっただけなのか、DVD版を購入しました。
代表的な5曲|オペラ座の怪人 25周年記念 in ロンドン
00:00 The Phantom of the Opera
05:20 Masquerade/Why So Silent
12:35 Think of Me
16:49 The Point of No Return
22:10 Down Once More/Track Down the Murderer
この動画は、その本編から代表的な5曲を鑑賞することのできるまとめ動画です。すごく好きです!授業で学生たちに見せたいなぁと思っても、全編を鑑賞させるとなるとかなり長いです。こうしてまとまていると紹介もしやすいし、いいですね。
フィナーレ|サラ・ブライトマンと歴代のファントムの共演
こちらは、オペラ座の怪人25年記念公演のフィナーレの映像です。もちろん全編も素晴らしいのですが、特にこのフィナーレに感動!感激!しました。
本編だけでなく、フィナーレが最高によかったので、これまでの観劇のなかで、もっとも感動したシーンのひとつとして、紹介します。
1曲目:The Phantom of The Opera
サラ・ブライトマンのクリスティーヌと、歴代の4人のファントムが共演しています。
Sing for me !
の畳み掛ける場面、すごいです。クライマックスですね。
2曲目:Music of The Night
そのあと、おだやかにファントムが歌うところも大好きです。
全編を観終わった後の、なんともいえない達成感。そのあとの、「この」フィナーレはたまらなかったです。
パリオリンピック2024|開会式:オペラ座の怪人
パリオリンピック2024の開会式はとても長くて、始まりは夕暮れ前、パリの夕焼けと日没をしっかり観ながら、フィナーレはライトアップが映える夜の時間帯でした。象徴に富んでいて、教養があるとより楽しめる!「これぞ、フランス!」という開会式でした。
フィナーレを飾ったのは、セリーヌ・ディオンの「愛の讃歌」でした!誰もがみな感動する場面はきっと、最後の聖火トーチが気球とともにあがっていく場面からのエッフェル塔、そこには世界の歌姫、セリーヌ・ディオンが!!のシーンかと思います。
(2022年に活動休止、闘病からの復活という意味もありましたね)日本のメディアでも抜粋が伝えられていたと思います。
次の記事で、セリーヌ・ディオンが「愛の讃歌」を熱唱するシーンと、エディットピアフの生涯を描いた映画やフランス語の歌詞の紹介、この曲をカバーしている他の歌手の聴き比べなどしてみました。
それ以外にも、いろいろな解説したいポイントがあり、今回は特に、フランス文学作品がたくさん散りばめられていたことに着目して、「オペラ座の怪人」のシーンを紹介したいと思います。
8:20〜聖火トーチを渡された子どもたちが洞窟の中を進みます
そして!!
8:51〜「オペラ座の怪人」のイントロが流れます(ほんの10秒ほど)
洞窟をいく景色と骸骨などの不気味さ、こういった世界観を見て、一度は「オペラ座の怪人」を鑑賞したことがある人であれば、この30秒の間に、「これはもしや!」と予見します。すると、8:51〜「オペラ座の怪人」のイントロと同時に、小舟にのった怪人のような人物が現れます。
このシーンは、オペラ座の怪人がクリスティーヌを誘い出し、自らの秘密の場所へと連れ出すシーンとして有名です。流れる曲は、The Phantom of The Operaです。
パリオリンピック開会式で、「なぜ英語のミュージカルが?」といった声もあったと聞いています。でもそれは少しおかしな意見だなと思います。教養としての「オペラ座の怪人」は、今や世界の誰もが知る作品ですが、原作はフランス人作家が書いた小説で、フランス文学です。フランス人なら誰もが知っている作品であり、この世界観です。
この開会式には、「オペラ座の怪人」のほかにも、他の文学作品も隠されていますから、またの機会に解説する予定です。フランス語を学ぶだけがフランス語学習ではなく、フランス語を通してこういった教養を身につけていくのもとても大切なことだと思います。と、いうわけで私の大学の講義では惜しみなく文化教養を伝えるようにしています!