日本でも馴染みのあるフランス語の曲でいちばん有名なのは、「オー・シャンゼリゼ」かもしれません。今回は、一度はメロディを耳にしたことのある(はずの)「オー・シャンゼリゼ」の聴き比べをしたいと思います。
オリジナル曲のほか、現代風アレンジのZAZ、フレンチボサノバ風のクレモンティーヌ(Clémentine)のカバー曲をご紹介します。メロディは耳にしたことはあっても、「一体どんなフランス語で歌われていて、どんな内容の歌詞なのか?」気になるかと思いますので、フランス語の歌詞も解説します。
フランス語学習者にとっては、習い始めてすぐに出てくる文法項目もたくさんでてきますので、大学のフランス語の授業では、フランス音楽の文化継承の意味でも(大学生たちにも知ってもらいたくて)この曲を流すようにしています。明るい曲なので、若い学生たちにも好評です♪
ジョー・ダッサン|Joe Dassin
「オー・シャンゼリゼ」のフランス語版オリジナルを歌ったのは、ジョー・ダッサン(Joe Dassin)です。アメリカ合衆国生まれの、フランスで活躍したユダヤ系シンガーソングライターです。1960年代から1970年代にかけてフランス語の歌(フレンチ・ポップス)を多く歌っています。
【略歴】
1938年生まれで、映画監督の父とバイオリニストの母のあいだに生まれ、1950年に父親の仕事の関係でヨーロッパに渡る。スイス・ジュネーブやフランス・グルノーブルの学校を卒業し、その後アメリカのミシガン大学で民俗学の修士号を取得。1980年心臓発作のため死去(41歳没)
略歴をまとめてみて、才能あふれる両親のもとに生まれ、1960-70年代に歌手として活躍しながらも、若くしてこの世を去ったということが印象的でした。アメリカ生まれでヨーロッパ育ちということで、英語とフランス語のバイリンガルだったのでしょう、だからフランス語で多くの歌を歌ったのですね。
オー・シャンゼリゼ|ジョー・ダッサン
フランス語のオリジナル版については、まずミュージックビデオがアニメーションになっていて、歌詞の内容と映像がリンクしていたりもするので、すごくいいです。パリの街並み、観光名所が次々に出てきて、見ていて面白いです。
それでは、パリの見どころ解説ならぬ、ミュージックビデオを解説します!
映像は、「8me ARRt Les Champs Elysées – Joe Dassin」という表記のパリの住所看板を真似たイラストから始まります。このパリの住所看板(このブログのアイキャッチ画像)は、パリを表すひとつのシンボルといってもいいですね、お土産マグネットなどにもなっています。ちなみに、8me ARRtは、パリ8区の意味です。
すると次の場面には、凱旋門をバックにシャンゼリゼ大通りが見えます。メトロの出口のエスカレーターを上り、パリらしいカフェを横目に、あのマロニエの並木道をさっそうと自転車で通り抜けるシーンから曲は始まります。
1回目の「”Aux Champs-Elysées”」のリフレイン(0:38あたり〜)のところで、コンコルド広場からのシャンゼリゼ大通りのカット、遠くに凱旋門が見えます。パリの沈む夕日は、ため息が出るほど美しいです。
ちなみに、ここの横断歩道ですが、【もちろん青信号のときに気をつけながらが大前提ですが】凱旋門とこのシャンゼエリゼ大通りを背景に記念写真をとっている観光客をよく見かけます。
パリといえば、よく鳩を見かけますし、可愛い子犬が散歩されていたりします。鳩と犬といった動物たちもしっかり登場しています。
そして、なんといってもパリは「愛の街」として知られていますが、キスをする恋人たちがたくさんでてきます。
間奏のところ(1:22あたり〜)では、イルミネーションのエッフェル塔を背景にメトロ6号線をばっちりみることができます。そしてアパルトマンの屋上からのモンマルトルの丘とサクレクール寺院、モネの睡蓮の絵画のあるマルモッタン美術館、そしてサンマルタン運河、セーヌ川と満月、野外映画館などが映り、3番にはいります。
3番からは、アレクサンドル3世の橋と背景には、ナポレオンの眠るアンヴァリッドのシーンに、幸せそうな恋人たちが現れます。次のシーンには、フランスといえばデモというわけで、パリのデモといえば、シャンゼエリゼ大通りですから、デモが行われているシーンになります。
と、思っていたらたくさんの愛するひとたちが一斉にキスをしているシーンで終わります。みんなが一斉に傘を広げて、空へ浮かびます。
全編を見渡すと、「太陽のもとでも、雨が降っていても、お昼の12時にも、夜の12時にも(Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit」という歌詞にあるように、天気や時間帯にあわせて、場面が描かれているのも特徴です。
登場する人物に着目すると、いろいろな人種を見つけることができるかと思います。フランスというと白人ばかりかと想像してしまいがちですが、アラブ系、アフリカ系、アジア系と多種多様なルーツを持つフランス人たちがたくさんいますので、そのあたりもしっかりとこのアニメーションでは再現されています。
オー・シャンゼリゼ|ZAZ
ZAZといえば、日本でも知る人ぞ知る人気のフランス語の歌手ですよね。彼女の独特な声がすごく魅力的で、曲のアレンジもとってもかっこいいです。このミュージックビデオでも、傘をモチーフにしているところが、なんともお洒落です。
このZAZの歌う「オー・シャンゼリゼ」は、フランス語の授業でもオリジナルよりも「これが一番好き」という学生が何人かいました。ZAZは、エディット・ピアフの曲もカバーしているので、またこのブログで紹介する予定です。
オー・シャンゼリゼ|クレモンティーヌ
クレモンティーヌ(Clémentine)といえば、サントリーのALL FreeのCMで、「天才バカボン」の歌で聞き覚えのある方もいるかもしれませんね。あるいは、フランス語学習者の方なら、NHK Eテレの語学業座「フランス語」のエンディング曲でおなじみかもしれません。
私自身は、やはりサントリーのCMとEテレの語学講座で彼女のことを知りました。彼女はまた、日本のいろいろなアニメソングをフランス語で歌うことで有名です。
わたしのいちばんのお気に入りは、「ドラえもん」のフランス語版です。もともと「ドラえもん」が好きなこともありますが、歌がフランス語で歌われているのは、本当に面白くて、なにより可愛らしいのです。ボサノヴァ風のフランス語で歌われる「ドラえもん」主題歌については、必ず記事を書きたいと思います!!
彼女は南米育ちのパリジェンヌということですので、曲の雰囲気もフレンチボサノヴァ風。ちょっとしたお洒落カフェで流れるフランス語の曲を想像するとこんな感じです。
可愛くてお洒落なので、このバージョンは大学生たちにも男女問わず、人気でした!
オー・シャンゼリゼ|フランス語の歌詞
すごくやさしいフランス語の歌詞ですので、フランス語を学習しはじめたばかりでも、辞書を片手になんとか読める、そういうフランス語の歌詞です。
動詞の時制で言えば、現在形、複合過去形、半過去形が使われていて、文法項目から見ても、この歌は仏検4級レベルのフランス語で理解することができます。
語彙についても、初級でならう単語がたくさん入っていますので、学びはじめてから少し経ってから聞けば、聞こえる単語や知っている表現がたくさんあって、楽しく歌えるのではないかと思います!
Je m’baladais sur l’avenue
Le cœur ouvert à l’inconnu
J’avais envie de dire “bonjour”
À n’importe qui
N’importe qui et ce fut toi
Je t’ai dit n’importe quoi
Il suffisait de te parler
Pour t’apprivoiser
[Refrain]
Aux Champs-Elysées, aux Champs-Elysées
Au soleil, sous la pluie
À midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez
Aux Champs-Elysées
[Couplet 2]
Tu m’as dit J’ai rendez-vous
Dans un sous-sol avec des fous
Qui vivent la guitare à la main
Du soir au matin
Alors je t’ai accompagnée
On a chanté, on a dansé
Et l’on n’a même pas pensé à s’embrasser
[Refrain]
Aux Champs-Elysées, aux Champs-Elysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Elysées
[Couplet 3]
Hier soir deux inconnus
Et ce matin sur l’avenue
Deux amoureux tout étourdis
Par la longue nuit
Et de l’Étoile à la Concorde
Un orchestre à mille cordes
Tous les oiseaux du point du jour
Chantent l’amour
[Refrain]
Aux Champs-Elysées, aux Champs-Elysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Elysées
Aux Champs-Elysées, aux Champs-Elysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Elysées
Aux Champs-Elysées, aux Champs-Elysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Elysées
シャンゼリゼとは?|「オー」の意味
いまさらながら、この曲の日本語のタイトル「オー・シャンゼリゼ」の「シャンゼリゼ」とは?なにかご存知ですか?曲の中でも、リフレインで何度も何度も、聞こえてきます。授業では「シャンゼリゼってなに?」という質問もあるので、念のため説明しておきます。
タイトルや歌詞のなかにでてくるこの「シャンゼリゼ」は、パリの有名な大通りの名前です。この「シャンゼリゼ」は、シャンゼリゼ大通りのことを指します。フランス語のタイトルは、Les Champs-Elyséesですが、これは Les Avenues des Champs-Elysées を省略したかたちで、シャンゼリゼ大通りのことを指します。
フランス語のAvenue(アヴニュ)は、「大通り」のことです。パリの凱旋門から、コンコルド広場までを一直線に走る有名な大通りですね。凱旋門のあるエトワール広場とコンコルド広場は、歌詞の中にも登場しますね。
日本語のタイトル「オー・シャンゼリゼ」は、曲の中の歌詞の一部をそのまま使って、タイトルにしています。
フランス語のタイトルは、「オー・シャンゼリゼ」ではなくて、Les Champs-Elysées(レ・シャンゼリゼ)です。「オー」はつきません。その代わりに、定冠詞複数形のles(レ)がついています。
日本語のタイトル「オー・シャンゼリゼ」の「オー」は、一見かけ声の「Oh !」のように思っている人がほとんどかと思います。実は、この「オー」は、かけ声の「Oh !」ではありません。
“Aux Champs-Elysées”という歌詞をみるとおわかりのように、「オー」と聞こえる箇所は、場所を表す前置詞「〜に」の意味になります。
もう少し詳しく説明をすると、場所を表す前置詞 à + 定冠詞の複数形 les の省略した形の aux になります。(詳しくは、前置詞と定冠詞の縮約)
したがって、日本語のタイトル部分の”Aux Champs-Elysées”を直訳すると「シャンゼリゼ大通りで」という意味になります。
今回はいろいろな歌手が歌う「オーシャンゼリゼ」を紹介しました。明るい曲は、聴くだけで心がほっと和んだ気持ちになっていいですね!特に私はフランス語を教えていて、「授業は楽しく、わかりやすく」をモットーにしていますので、この曲はそういった意味でも必須です♪